オリンピック レスリング 乙黒拓斗 金メダル フリー65キロ級

東京オリンピック、レスリング男子フリースタイル65キロ級で乙黒拓斗選手が金メダルを獲得しました。

レスリング男子フリースタイル65キロ級で初出場の乙黒拓斗選手は、6日行われた1回戦と2回戦、それに準決勝を勝ち上がりました。

乙黒選手は7日の決勝で、前回のリオデジャネイロ大会の男子フリースタイル57キロ級で銅メダルを獲得したアゼルバイジャンのハジ・アリエフ選手と対戦しました。

試合は前半から積極的に攻める乙黒選手が鋭いタックルを決めて、2ポイントを先制しましたが、終了間際に相手に反撃を受けて同点で折り返しました。後半も乙黒選手が攻めてポイントを奪うなどして5対4で競り勝ち、金メダルを獲得しました。

乙黒選手は試合終了後、マットの上で涙を流したあとコーチと抱き合って喜びを分かち合っていました。

乙黒「準備がラスト30秒で生かされた」

 
金メダルを獲得した乙黒選手は「本当に苦しいことが多く、周りの人のおかげで少しずつ前に進んできた。本当に夢をかなえられてすごくうれしい」と涙ながらに答えていました。
終盤に逆転のポイントを取った場面については「オリンピックが開催されると信じて、できる準備をしてきた。その準備がラスト30秒で生かされたと思う」と振り返っていました。
乙黒選手は、表彰式で受け取った金メダルを少し見つめたあと、みずから首にかけました。
ロンドン大会の男子フリースタイル66キロ級で金メダルを獲得した米満達弘さんは所属する自衛隊で先輩にあたります。
表彰式のあと、乙黒選手は「手もとに金メダルがあるのが信じられない。米満さんと同じく金メダルをとることができてうれしい。東京オリンピックは楽しかった」と笑顔で話していました。

オリンピック延期の1年で“精神的なもろさ”克服

 
乙黒拓斗選手がオリンピックで見せた戦いぶりは、かつて見られていた精神的なもろさがなくなり、成長を感じさせるものでした。乙黒選手に自分の強みは何かと聞くと少し考えたあと、こんな答えが返ってきました。

「スピード、パワー、技術、タックル、投げ技、寝技、守備とオールマイティーです。人間ではできないような、空中で戦っているみたいな動きを見てほしいです」

そのことばどおり、乙黒選手の戦い方は野生の動物を思わせるしなやかで俊敏な動きで攻守にセンスを感じさせます。幼いころから乙黒選手を知る山梨学院大学の小幡邦彦監督はその動きは本人の努力による成果だと評価しています。

「あんなに練習する選手は見たことがない。能力があるのに、誰より努力できる。どんどん技を教わりにきて暇さえあれば練習している」

オールマイティーと自負する乙黒選手の唯一の弱点は、精神的なもろさでした。前年の王者として臨んだ、おととしの世界選手権では相手の反則にいらだち、平静を保てなくなったところを突かれてポイントを奪われ、5位に終わりました。
乙黒選手は課題を自覚し、オリンピックの延期によって得られた1年に精神面の成長を図りました。試合だけではなく、かつては練習でポイントを取られるとマットをたたくなどいらだちを隠しませんでした。乙黒選手は練習でも常に冷静でいることを意識し、気持ちをコントロールするよう努めました。

さらにこの春、大学を卒業して自衛隊に入りました。社会人で競技を続ける中で「多くの人にサポートされていることに気がついた」と話し、周囲への感謝の気持ちを強く持つようになったといいます。

精神面を強化して臨んだ今大会で乙黒選手は「集中して、冷静に戦うことを心がけた」と落ち着き払っていました。乙黒選手が2回戦と準決勝で対戦した選手は悔しい思いをした世界選手権で、いずれも敗れている相手です。今回は乙黒選手が終始ペースを握って勝ちました。

そして決勝ではリオデジャネイロオリンピック銅メダリストの選手に勝って、金メダルを獲得しました。「努力できる天才」が精神面での成長を遂げて、世界の頂点に立ちました。

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